チャーリー・パーカー(1)


私にとってジャズといえばチャーリー・パーカーである。何故だかわからないが全く

飽きることがない。そんな音楽は今まで聞いてきたものでパーカーだけである。  

始めてパーカーのレコードを買ったのは、陶芸家をめざしていた二十歳の時だった。

その頃岐阜の山奥で、陶器製造の工場で働いていたのだが、ある時モダン・ジャズのレ

コードを買おうと町のレコード屋に出かけた。高校生の時に買った、マイルスとキャノ

ンボールのブルーノート盤「枯葉」が気にいっていたので、同じアルトサックスの入っ

たジャズを捜すことにした。チャーリー・パーカーの名前は知っていたし、天才プレー

ヤーだった、ぐらいのことは聞いた事があったのかもしれない。ダイアル盤のパーカー

を買って帰った。 ところがレコードに針を落としたとたん、想像していた音とあまり

に違うのでがっかりしてしまった。私はモダンジャズというのは、みんなブルーノート

の枯葉のような、音と雰囲気をしているものと思い込んでいたのだ。そこへいくとその

レコードは、音は悪いしせわしなく、モダンジャズではない?特に気持ち悪かったの

は、あのラヴァーマンを聞いたときだ。 大失敗である。しかしその頃の安月給ではレコ

ード一枚が貴重なのだ。くやしいのでレコードをかけ続けた。少しでも楽しんで元をとら

なくてはならない。  ところがやけくそで聞いていたつもりが、朝起きるとまずパーカー、

仕事から帰ってまたパーカー、そして寝るまでパーカーと、そのダイアル盤ばかり聞くよ

うになってしまっていた。どうやらバード熱に罹ったらしく、その辺の記憶があいまいな

のだ。しかし次の週にはサヴォイ盤を買いに行き、翌月には借金までして東京に帰るつ

いでに、アルトサックスを買ってしまった。ケースまで買えなかったので、なにかに包んで

もらって帰ってきた。 始めてサックスを抱えてみると、小中学校時代のリコーダーしか知

らないので、あまりのキイの多さに驚いてしまったが、しかしそこは熱に浮かされた病人で

ある。まったくめげずにブラスバンド用の教則本を見ながらドレミファソラシドを何回か吹い

ただけで、なんとテープに録音しておいたパーカーを、コピーしようとしたのである!

もちろん私には、ジャコ・パストリアスのように、始めての楽器でも、ちょっと触っていると弾

けてしまう、などという才能があるわけではない。これは私がいかに重い病を患ったかとい

う話であり、どれだけバカかということを言いたいわけではないので、どの曲をコピーしよう

としたかは言わないでおく。