オイルプリントの制作  

様々な処方があり、これはあくまで私の制作方である事をおことわりします。
処方その他、改良点ありましたら随時変更していきます。


オイル(ピグメント)プリント
1904年イギリスのローリンスにより考案される。紙にゼラチン
を塗布し、重クロム酸カリ溶液によって感光性をもたせ、ネガと
密着して太陽光で焼きつける。その後流水で水洗すると、シャドー
部は硬化して水分を吸収しにくくなり、ハイライト部は水分を吸収
して膨張する。それにより紙上のゼラチンがレリーフ状になり、
そこに油性絵具をブラシで叩きつけていくと、水分の少ないシャドー
部には絵具が付き、水分を多く含むハイライト部は油性絵の具を
反発して受けつけず、これにより階調が表現される。

(数年後に考えられたブロムオイルは硬膜処理のされていない
モノクロプリントを漂白し、オイルプリントをする技法

1 ゼラチン紙の制作
(用具) 無酸紙 ゼラチン 水温計 ガラス板 水準器  
      ガラス棒 チモール(防腐剤)

使用する紙は、保存性の良い、できるだけ良質の無酸紙を
使うが、用紙の質感、色調によって作品の雰囲気は変わる。

始めに、紙の伸縮を取るために、一晩水に漬けた用紙を
乾燥させておき、ゼラチンを塗布する前に、また水に漬ける。
 
水500ccのなかに、ゼラチン35gを入れ、1時間置き、
その後38℃に暖め溶かしキッチンペーパーで
濾す。  ゼラチン液1500ccに対し、アルコール6cc

チモール1g溶かした溶液を混ぜる
ガラス板、ガラス棒、ゼラチンを入れるメスシリンダーを、
熱湯に漬け、温めておく。
温めたガラス板を水準器を使い水平にし、
間に空気
が入らぬよう紙を載せ、水を切り、
ゼラチンを垂らし、ガラス棒でならす。
ゼラチン液に泡が入らぬように注意する。
これを取らないとピンホールができ、後の
修正が難しくなる。

季候にもよるが、15分ほどで、ゼラチンが凝固するので、
ガラス板から剥がし、平らなところに置き、後に画鋲でとめ
乾かす。私はゼラチン層を、後述の理由で厚く塗布するが、
仕上げ、完成後の保存など、気をつけなければならない。
壁などにとめていると画鋲を跳ね飛ばすほどである。

2 感光液の塗布

重クロム酸カリか、重クロム酸アンモニウム
6パーセント
溶液5ccに、アルコール10cc
を加え、平バケでムラのない
ように手早く塗
布する。塗りムラを避けるには 2%水溶液に
浸す方法が良い。
感光性が低いので、室内光
のもとでの作業
が可能。感光液の塗布量はネガにより加減
し、
塗布した用紙は保存が効かないので、
なるべく早く使いきる。


 露光

KODAK HEVY WEIGHT PRINTING FRAME 8x10


プリントには、プリンター(焼成枠)を使う。
ずれないようにガラスで押さえられれば、特に
必要ないが、(ゼラチンを、厚く塗布した場合)
乾燥したゼラチン紙は押さえにくい。
露光時間は、真夏の直射光で3秒〜6秒
曇天では、数分〜数時間。北方の放散光
が良いとされるが、ネガの状態によって調
節すべきで、覆い焼きなど普通のプリント
と同じようにする。
露光により、黄色だった塗布面が、茶色に
変化する。



露光時間は、真夏の直射光で3秒〜6秒曇天では、数分〜数時間。
北方の放散光が良いとされるが、ネガの状態によって調節すべきで、
覆い焼きなど普通のプリントと同じようにする。
露光により、黄色だった塗布面が、茶色に変化する。
 水洗
水洗は、約20〜30分
表面の画像がきれいになくなるまで行うと、ゼラチンが
水を吸い厚みを増しレリーフ状になる。コントラストの高い
部分は、うっすらと輪郭線が見える。レリーフが立ちにくい
場合は水温を上げる。逆にたちすぎの場合はしばらく置き
乾かす。水洗後、化粧石鹸で洗うとか、インキングの前に
1度完全に乾燥させたほうが良い、そのままインキングを
したほうが良いなど諸説あるが、どれも当時の作家が言う
ほどの効果は確認していない。
5 インキング
当時は、絵具は専用のものがあったが、リトグラフ用インク
を使用している。絵具が硬い場合、アマニ油を入れる。特に
黒色がきれいに見えるが、乾きが遅い。インキングの間は、
プリント紙の水分が乾燥しないようにする。
問題はブラシで、当時のブラシの毛の硬さが解らず
スポンジや、刷毛を切ったり、その切断面を焼いたり
イメージに合うタッチのブラシを工夫して使い分けている。
接地面が平面であればいいわけで、このプリントでは染色
に使うブラシを使った。始めから先が平であり、安価である
が、毛が抜けやすく、耐久性に欠ける。海外にはヒゲそり時
に使うブラシを使っている作家もいる。

ホッパー

反動を利用し、弾むようにインキングする。

最新寫眞科學大系特殊印画法 昭和十年 新光社より


※伝説のブルースミュージシャン、ロバート・ジョンソンが、悪魔と取引するため
十字路で悪魔を待っている。

ブラシの使い方は、これこそ、このプリントの難しいところであり
醍醐味でもある。なれるまで、数をこなすしかない。
レリーフの立ち具合、インキングの具合により、ベンジンで拭き
取り、再度水やぬるま湯に浸けやりなおす。

(ホッピング)ブラシが画面につく瞬間に跳ね上げる。
(ダッピング)跳ね上げる速度はゆるやかに。
(プレッシング)画面に押し付けるようにする。
 仕上げ
時には、1時間以上叩いているので、ブラシの毛が抜け
画面に付くので、針のような物で、なるべく取る。
剥げたところは、まだ濡れている間に再度インクを付ける。
完成後、乾燥させる。インクを取り去り、再度温水に漬け、
レリーフ
を立てた後、インキングも可能。
7 フラットニング
ドライマウントプレス機  
前述のように乾燥後の用紙はめくれあがり
額装など困難なので、ドライマウントをしている。

8  完成

 まとめ

オイルプリントが考えられてから数年後に、プリントした印画紙を
漂白してから同じ方法でプリントするブロムオイル法が発表され
安定した市販のプリント紙を使い、引き伸ばした大判のプリントが
得られるブロムオイルに以降して行ったのは、当然といえる。
現在のプリント紙はゼラチンに、硬膜処理がなされているので、
使う事ができない。(ケントメア製の印画紙など使用可能)
しかし、画調に影響を及ぼす用紙と、ゼラチンの厚みを工夫できる
というオイルプリントの
利点も多い。厚いゼラチンによる印画は、
粒子の見えない画面も可能である。 

大正時代のテキストどおりにやってみても、始めは
全く画がでず、
肝腎な事を隠しているか、ページが欠けているのではないかと思っ
たが、実際やっていくと、ブラシの使い方など数をこなして熟練する
しかないことがわかる。そのためには、ネガにあわせた露光時間、
水洗時間の調節、それによる適切な含水量を知ることが必要である。


現在の感覚からすると、この技法は写真より版画に近く、実際画面
を1時間以上もブラシで叩いていると、写真をしている気がしない。
最近は使用フィルムなどが製造中止になり、デジタル出力した
製版用フィルムをネガとして使用している。そのため最近は大型
カメラよりも35mmカメラを使用する事が多くなっている。デジタル
と、この修験者の術のような技術は、両極ゆえに実は相性が良いと
考えている。 いずれにせよ、完成した作品は、時にブラシの毛
がへばり付いた超アナログである。

10 
トランスファー法(転写法)

11 大正芸術写真