明日できること今日はせず  

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5某日12 久々の糠床

ここ2、3日、大変な食欲である。迫る締め切りのせいであろうか。食べても々腹が減る。 ○ヶ月間、蓋を開けようともしなかった糠床。恐る々開ける。さすがに表面は乾燥気味であったが、腐った様子はない。表面を取り除き、冷蔵庫に○○○前に買ったままのキュウリがあったので、当然食べるつもりも無く、糠床に水分与えるために塩や、カラシと一緒にいれてみた。数時間後ためしにとりだしてみると、妙に美味しそうである。色も綺麗なので食べてみたら、これが実に美味しい。不思議なことがあるものである。迫る締め切りに幻覚でもみているのではあるまいか。締め切りから開放されて糠床を開けてみたら。牡丹灯篭のようなことにならなければ良いが。


5某日11 一日

昨日は髑髏に蝋燭を撮影してみたが、流れた蝋のため、カッパのようにみえて面白くない。別の意味では面白いが結局採用せず。貴重な時間が無駄になったが、撮影自体は楽しいものであった。 某公園にて、この期におよんで『盲獣』用”鎌倉ハム”を撮影。後に嫌気がさして、乱歩が削除したシーンである。現在の感覚からすればたいしたことはなく、乱歩の生真面目さが感じられるエピソードである。黒蜥蜴の仕上げにかかる。締め切りとは有り難いもので、おかげで止めることができる。


5某日10 乱歩邸

旧乱歩邸にて撮影。出掛けに東西線の木場駅で女子高生に捕まった痴漢。顔面蒼白で怒りまくる女子高生。重い膝蹴りが痴漢のボディに突き刺さる。必死でとめる駅員。 乱歩邸は乱歩の孫の平井憲太郎さんに便宜をはかっていただいた。有り難いことである。現段階で完成した作品を持っていったが、笑顔で見て頂いてホッとする。調べ物とかで新保博久さんがお見えになる。 最終カットは応接間の乱歩と決めていたので目的のカットに絞る。これは以前観た夢がヒントになっている。応接間で何故か宴会をしていると、乱歩が二十面相のマスクをコッソリ着けようとするのを、みんなが止めていた。そういえばその中に新保さんもいた。 ソファーからクッションにいたるまで、いたるところナンバーが貼られていた。このさいとばかりに、一段と背もたれが高くなっている乱歩愛用の椅子にそっと座って記念写真を撮ってもらう。すると胸のウチから『ユルス』の声が。乱歩さんには天井裏から椅子の中にまで入ってもらったが、怒ってはいないようである。同行した編集者は、今回の事で乱歩を初めて読んだような男なので、二人きりで乱歩邸の応接間にいても、まるで親戚のおじさんの家に来たような顔をしていた。


5某日9 白昼夢

2時半に駒沢大学駅に初対面のNさんと編集者と待ち合わせをし、駒沢公園へ。『白昼夢』用の首の撮影である。切断された首や胴体など、いかにも人形で済むようなものを、それをあえて人間でやっている。人形がバラバラなど当たり前すぎて面白くないと考えたからである。太陽が出たり入ったりしているので、タイミングを見計らって撮る。ニッコリと笑っている瞬間を殺される浮気物の女房。イメージは出来ていたのでスムーズに進み、良い笑顔が撮れた。その足で麻布十番の田村写真に向かう。今回は画像はデータ入稿だが、カバー写真だけは田村氏にプリントをお願いしたかった。来年十周年を迎える田村写真だが、初めて気球にぶらさがる乱歩のプリントが上がった時のことは忘れられない。帰りは土砂降りの雨。 明智対二十面相。都内某高所での対決場面完成。画像の一部分を。


5某日8 1日

近所を歩いていると、様々な色の薔薇が咲いている。花オンチの私でも青空に赤い薔薇など、つい足を止め魅入ってしまう。 などと余裕をかましている場合ではない。昨日は『D坂の殺人事件』の古書店の女房を撮影。この女房は二軒隣の蕎麦屋の主人とSM関係にある。よってその背中に傷痕を施す。しかし、朝っぱらからする作業ではない。続いて明智対二十面相。妖しげな建物内で見詰め合う好敵手二人。構図も決まった。さらに高所での明智と二十面相。マントを少々換えたくなる。そこで『押絵と旅する男』の押絵額を包むために借りている風呂敷をマントにする。そもそも怪人二十面相、月光仮面など、マントは風呂敷を使用する物と決まっているのである。風呂敷マントの二十面相を見るのはペンキ屋のKちゃん以来。 出版に伴い、乱歩関連のイベントが決まり、会場の渋谷『JZブラット』を下見に行く。ライブハウスなので演奏その他ということになるであろう。いやにオシャレな場所であった。


5某日7 一周忌

早いもので父が亡くなり一年経った。 大江戸線で寺に行くのは初めてなので駅で地図を見ると、乱歩が住んだ築土八幡と目と鼻の先であった。こんど行ってみることにする。 人形など造っていると、だんだんその人物のあらゆる角度、状態が浮かぶようになり、頭の中で自由自在になってくるものだが、実際見飽きるぐらい見てきた父の姿となると、まるで、そこに居るかのようである。TVでプロレスや格闘技戦などあると、終了と同時に電話がかかってきて、ひとしきり話し合ったものだ。なにしろ共通の話題がそれしかない。亡くなった当初こそ、もう電話が来ないんだなと、寂しい気分を味わったものだが、父の趣味傾向は解っているので、これも聞こえてくる。スポーツ新聞に影響されすぎ、戦力分析も甘い。だいたい私は最後まで気を使って、馬場派なのに猪木派を装っていたのである。 歳のそれほど変らない親類と、小学生以来くらいに話をした。父と三人で映画を観に行ったこと覚えているか訊いてみると、覚えていると言う。新藤兼人の『藪の中の黒猫』である。太地喜和子の映画デビュー作。少なくとも私は生まれて初めて、スクリーン上の巨大なヌードを観た。彼も間違いなく覚えているに違いないと踏んでいたのである。



5某日6 撮影

早朝、明智l小五郎役をお願いした市山貴章さんと編集者二人と都内某所に集合。8時半より撮影を開始。早々に私のミスが発覚したが、都合の悪いことは書かない雑記なので省略。以後、順調に進む。時間的に造れるかどうか判らないが、女性編集者を相手に、黒蜥蜴との最後のラブシーンを演じてもらい終了。出版社に寄り、D坂の『白梅軒』にて明智と共演のTさんも合流。二人には浴衣に着替えてもらい、神田のエリカに向かう。営業中なので時間は30分。夜のシーンで遮光が肝心。助っ人も増える。ここではすでにアングルその他、決まっていたので3脚を立て、1本撮って終了。午前中に時間制限のある撮影が終わり、ホッとして皆さんと珈琲をいただく。私も市山さんもTレックスとELPを観ていた話から、70年代ロックの話などで歓談。 昼食の後、江東区の某鉄筋アパートに潜入。途中人の気配に、私と拳銃を持った市山さんは狭いバルコニーに退避。撮影は順調かつあっという間に終了。長居は無用。疾風のように次の撮影地へ。ここでは荒れた壁その他様々な要素があり、市山さん、自前のスーツが汚れるのもかまわず、ファインダー内は活劇調に。やはりプロは違う。そして最後に天井の高い出版社をお借りし、高所用撮影にて終了。茶碗酒で乾杯。


5某日5 乱歩 夜の夢こそまこと

パロル舎より、7月下旬発刊予定。『D坂の殺人事件』『白昼夢』『盲獣』『人間椅子』『黒蜥蜴』『怪人二十面相』『目羅博士の不思議な犯罪』『押絵と旅する男』『屋根裏の散歩者』の9作品。当初、ページ数の少ない絵本のような物を考えていたのだが、普通の単行本のような体裁となり、よってページ数が増えてしまった。個展の場合と同じに考えていたが、私の個展では、30点くらいなので、それより倍以上必要となる。人形を等身大に見せる都合上、常に人形が最前に配される、今までの方法ばかりでは面白くないので、デジタルの合成を多用したが、もともと下手糞なので時間ばかりかかってしまった。 こう書いていると、さも完成が近いようであるが、さにあらずなのである。乱歩先生ならこんな時、誰にも行く先を告げずに旅に出るところであろう。 


5某日4 D坂の古書店完成

地面を撮りに公園に出かける。小雨の中、地面に向けてシャッターを切る。実にバカバカしい撮影である。小学生と老人がベンチにたむろしているだけだが、その分、たくさんのハトが地面をついばんでいる。じゃまでしょうがないが、雨の中、何をしてるんだろうと子供達が見ている。公園の真ん中でハトを追いはらう気になれず。数カット撮って帰宅。これで三人書房の撮影は終了と、乱歩が描いた三人書房のデッサンを見ると、店の前の線路みたいなものはドブ板じゃないのか?乱歩先生、こんなトコまで描かなくても・・・。しかたなく、ドブ板(に近い物を)撮りに出かける。 団子坂で、かつて乱歩が経営していた三人書房が仕上げを残し完成。フォトショップのレイヤーはすでに80を超えようとしている。これを明智小五郎が白梅軒より眺めることになる。できれば日曜日のアンダーグラウンド・ブックカフェに出品したいものである。


5某日3 地面

結局、押絵と旅する乱歩は完成したが、ぐずぐずしていて光線具合がイメージと違ってきたので、撮影は数カットで止める。夕方の光を、そのまま使おうと思ったのだが。 そろそろ『D坂の殺人事件』用、古書店前の、D坂の地面を合成しなければならない。地面をどこで撮ろうかのんびり考えるが、ホントに撮る場所がない。実にふざけた話である。まさか地面を撮るために、電車に乗ることにならないだろうな。そのくらいならアスファルトを剥すぜ。と腹が立ちはじめた時、老人がゲートボールをしている公園があったのを思い出した。しかし、まさか人が多くて、デジタル処理させるんじゃないだろうな。そのくらいならD坂の幅を狭くするぜ。


5某日2 一日

昨日、田村写真の田村氏に付き合ってもらい、都内某所にて撮影したのだが、上がりは上々であった。明智小五郎と二十面相は、どこか高いところで対決してもらいたいと考えていて、熟慮のすえ決めた場所である。イメージどおりになれば、活劇調の名場面になるはず。 予定より少々グロテスクになり躊躇していた『盲獣』の1カット。友人に送ってみると『ハハハハハッ!』で始まる返事が来た。笑えるなら、それも有りであろう。 先日撮影した浅草寺。今ひとつだったので、連休の混雑の中再撮に出かけ、風船に結ばれた片脚、無事浅草寺上空を漂う。 明日は押絵と旅する乱歩を撮影する予定である。


5某日1 押絵と旅する乱歩

朝、着けっぱなしのラジオから流れる、天知茂の陰々滅々たる昭和ブルースで目が覚める。午前中からこんなもの流すなと云いたい。昨日作った押絵と旅する乱歩をベランダにもって行き乾燥させる。 魚津から上野へ向かう列車内。押絵の男側の車窓からは、夕焼けの日本海が見えるという設定であった。しかし読み返すと、おそらく対角に座る男が『窓ガラスに顔を押しつけてのぞいて見ても、時たま沖の漁船の舷燈が遠くポッツリと浮かんでいるほかには、まったくなんの光もなかった。』という。画としては海があったほうが様になるが、押絵の男側の窓からは海を消す。読み返すんじゃなかった。イメージなんだから、些細なことはどうでも良いといいながら、気になることは気になる律儀な私である。しかし、どうせだったら押絵となってしまった兄に、夕焼けの海を見せてあげたいものではないだろうか。