船への挨拶(戯曲)



『国際信号旗 WAY『汝の愉快なる航海を祈る』OVG『ありがたう』。
『たうとう討つたな、俺を、射つたんだな。……俺の胸の中に弾丸が、……ああ、自分でそいつを見たいんだが。……この中に弾丸が、……船から来たんだ。船から……俺を狙つて……弾丸が。……熱い、火みたいな、小さな、すばらしい弾丸。……俺の肉のなかに……やつと届いたんだ。俺のなかに。……船の、熱い、火みたいな挨拶が。……待つてゐたものが、たうとう来たんだ。花束を届けるには、かうする他はなかつたんだ。眞黒な、鴉みたいな船。ありがたう。……海。……世界。……ああ、沖のはうのすばらしい雲。(一郎倒れて死ぬ)』

船からの信号旗による挨拶に倦み果てている灯台の海上保安庁職員。ある日密航船より銃撃を受け待ち望んだ熱い火みたいな挨拶≠受けたと感謝して死ぬ。
三島が『潮騒』の取材のおり着想した戯曲。撮影場所は千葉県は野島埼灯台。その日は暗い曇天であったのを、事前に撮影していた入道雲を配し、無理に晴天に変えたのだが、そのせいでかえって奇妙な空気感が出たように思う。灯台の位置も実際とは違う。

突然現れた黒い密航船


作中では見張り小屋となっている。霧笛を発していたようで、屋根の上にホーンある。実際は窓は塞がれ、現在使われている様子はない。信号旗は昭和四十年代に改定され、現在とは異なっている。