RAMPO

6某日15 先生それはいけません!

ここ数日、寝苦しさのせいか、一晩で三回くらい目が覚める。(正確にいうと明け方から昼にかけてだが)おかげで、けっこう夢を見ているのが判った。中に乱歩関連が一つ。 乱歩邸の応接間。何人かで酒盛りをしている。見ると着物姿の乱歩が、机に向かって執筆中である。乱歩は寝床で寝転がって書くと聞いていたが。それにしても、こんな所で騒いでいていいのだろうか?私は酒を飲みながらも、乱歩から目が離せない。すると先生、こちらを気にしながら、懐で何かコソコソやっている。その時、それに気付いた新保博久さんと山前譲さんが、背後から乱歩に飛びかかった。「先生、それだけは御止め下さい!」二人して老人を羽交い締めにし、腕をねじり上げている。たまりかねた乱歩がポトリと落としたのは、二十面相の仮面であった。一斉に色めき立つ人々。カーテンを慌てて閉じる人もいれば、拳銃を犯人から遠ざけるように、仮面を蹴飛ばしている人もいる。サングラスの男が、「先生の決心がお堅いなら、それも結構やないですか。」口を塞がれ、よってたかって室外に出される。私は見てはいけないものを見てしまったという気分のまま、乱歩邸を後にした。それから池袋駅になかなかたどり着かず苦しんだ。


5某日10 乱歩邸

旧乱歩邸にて撮影。出掛けに東西線の木場駅で女子高生に捕まった痴漢。顔面蒼白で怒りまくる女子高生。重い膝蹴りが痴漢のボディに突き刺さる。必死でとめる駅員。 乱歩邸は乱歩の孫の平井憲太郎さんに便宜をはかっていただいた。有り難いことである。現段階で完成した作品を持っていったが、笑顔で見て頂いてホッとする。調べ物とかで新保博久さんがお見えになる。 最終カットは応接間の乱歩と決めていたので目的のカットに絞る。これは以前観た夢がヒントになっている。応接間で何故か宴会をしていると、乱歩が二十面相のマスクをコッソリ着けようとするのを、みんなが止めていた。そういえばその中に新保さんもいた。 ソファーからクッションにいたるまで、いたるところナンバーが貼られていた。このさいとばかりに、一段と背もたれが高くなっている乱歩愛用の椅子にそっと座って記念写真を撮ってもらう。すると胸のウチから『ユルス』の声が。乱歩さんには天井裏から椅子の中にまで入ってもらったが、怒ってはいないようである。同行した編集者は、今回の事で乱歩を初めて読んだような男なので、二人きりで乱歩邸の応接間にいても、まるで親戚のおじさんの家に来たような顔をしていた。

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