澁澤龍彦には作品のファンであるという事以上の想いがあります。
 陶芸作家をめざしていた二十歳の頃、私は少しは真面目に社会人
 のフリぐらいはできるようにと、山奥のロクロもない量産工場で働い
 ていましたが、普通に社会人としてやっていけるのでは?と想い始
 めた頃。知り合いの女性が桃源社の集成シリーズのなかのエロテ
 ィシズムという本を読めと言って置いていきました。当時は本を遠ざ
 けていましたがそんなに言うのならと読んだのが始めでした。
 私はこの人は正しい!と直感し、さらにお前のような人間は好きな
 事をやれと書いてあるように想えました。
 その後どういうわけか人形を造るようになりました。生前一度はお
 会いしたかったのですが、その当時はジャズなどの人形を造ってい
 ましたし、 接点もありません。それがこの作家シリーズを始めたこ
 とにより、澁澤邸での撮影が実現することになり、感慨ひとしおであり
 ました。書棚にMG5!があったので翌日スーパーに置いてある、MG5
 の懐かしい匂いを嗅いだものです。 私はすべての著作を読んだと
 いうような読者ではありません。私にはこういう人物が実在したとい
 う事実が重要であり、喜びなのです。